犬ほど素敵な商売はない 榎田 尤利 (2006/06/26) 大洋図書 この商品の詳細を見る |
悪い子だ。発情してしまったのか?
自覚のあるろくでなし・三浦倖夫は、うだるように暑い夏のある日、会員制のデートクラブ「Pet Lovers」から「犬」として、寡黙で美しい男・轡田の屋敷に派遣される。そこで倖夫を待っていたのは厳格な主人轡田の厳しい躾の日々だった。人でありながら犬扱いされることへの屈辱と羞恥。そして、身体の奥底に感じる正体不明の熱・・・次第に深みにはまっていくふたりだったが!?
顔だけがとりえのホスト三浦倖夫っは、ホスト仲間に誘われてボーイを犬にたとえるウリ専に登録する。
初めての客は寡黙で美しい男(←これ重要。"寡黙で美しい男"と書いてある)・轡田。
美形同士だから成り立つストーリーであって、これが片方もしくは両方不細工なオヤジ同士だったと想像してみよう‥異常なまでの執着心も他に誰も相手をしてくれないから必死だなとしか思えなくなってしまう。轡田が社会的地位もある美形でないと、ただのボーイに入れ込んだ憐れな客になってしまうのだ。
社会的地位だけでも札束で頬を叩くようじゃ、ストーリーのテーマが変わってきてしまい、美形だけでは高額で倖夫を買ったり、暴力沙汰を起こした倖夫をかばって、関係者を金で黙らせるバブリーなことができなくなってしまう。
倖夫も、変なオヤジに買われるくらいなら…と轡田の犬扱いをがまんするシーンがあるので、轡田が貧乏で不細工なオヤジだった場合、命令したとたん「やってられるか!」で倖夫は帰ってしまうので話が終わってしまう。
では倖夫が美形ではなかった場合・・そもそも売れない。よしんば売れても「美しい犬」を探していた好みのうるさい轡田のもとにはたどり着けないので話が始まらない。
で、内容。
轡田は倖夫を犬として躾を始める。といってもSM的な扱いではなく本物の犬として扱われるので、四つんばいになり飼い主の命令は絶対だと頭を押さえつけられ、「座れ、立て、伏せ」などの“躾”をされる。
轡田の前では常に犬としていなければならないので、四つん這いでたつことも許されず、しゃべることも許されない屈辱的な厳しい躾に反発しながらも、次第に深みにはまってゆく過程が面白い。
深みにはまって行くのは倖夫だけではなく、傍から見たら異常に見える主従関係は、屈辱的な躾に反して、自分より犬を最優先にするご主人様・轡田の愛情表現が暗示になりお互い依存して病んでいくというシリアス。
犬なので手を使えないので皿から水を飲ませたり、首輪をかけたり鞭持ち出してみたりSMといえばSM。だけどプラトニックさが逆にエロティックだったりする。
後半は眼球まで舐めてみるプレイも豊富な濃いエッチ。
けっきょくセックスはするものの、関係を持って犬に注ぐ愛情ではなく人間として愛していた感情に気付き臆して契約を切る。
というどちらもトラウマ付きの問題児同士の、ゆがんだ愛情表現しかできない、コンプレックスと執着心の持ち主。でも超美形。そして轡田(攻め)がモデル事務所の社長だったり、バックボーンも豪華。
そんなこんなで最後はハッピーエンドなのは安心。
ちょっと変わった主従関係。
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