Jの総て (1) / 中村 明日美子 |
マリリン・モンローになりたかった少年Jの物語
僕は男の人が好き。
ボーイズラブには違いないけれど、トランスジェンダーの男の子の幼少期から青春時代を主に描かれている。
ギムナジウム・耽美関連のキーワードが好きなら絵柄とストーリーは間違いなくストライク。
そうでなくても、Jがとても魅力的に描かれていて読み応えがあり、漫画に一冊¥1,000と躊躇するけど、手にして後悔はかったです。
BLというよりJの青春を追いかけた、幸せになれたジルベール(風と木の詩)が近い。
主人公の少年Jは小さな頃からマリリン・モンローが好きで怒られながらもマリリンのマネをしたりスカートを穿いたりしています。自分が何かを理解する前に、父親に犯されそれを目撃した母親が父親を殺してしまい、一時期声を失うという過酷な幼少期を過ごす。
だからといって卑屈になるのではなく、オカマだと虐められれば逆襲するし、欲しい物を手に入れるためなら美貌を使っておやじ口説いていく逞しさも持っています。性格も言いたい放題で、まさに美人で性格の悪い女の典型で可愛げないです。
孤児院に入れられていたところを高等中学校の理事長に引き取られ、通うけれども隠れてバーで女装をして歌を歌い、欲しい物は必ず手に入れる一貫した強さはいっそ清々しく気持ちがいいです。
おやじ踏み台にするしたたかさの裏でそんな自分に対して皮肉ってみたり、好きになった相手は自分の人生に巻き込みたくないと言ってみたりする否定的なJの言葉が重いです。
そんなおやじ転がしまくって生きていくJですが、失ってしまった家族に対する想いや初恋の相手をずっと想い続ける純粋な気持ちを両方持っている、強さと繊細さが可愛く読み進めるとJの魅力にはまれました。
エログロあり。近親相姦あり、レイプに差別に刑務所生活、自殺未遂ありでてんこ盛り。絵柄はクリムトやコクトー好きそうな雰囲気で、毛がポイント。
周りを取りまく人間模様もみんなそれぞれ魅力があり嫌な役回りがないハッピーエンドです。
Jの子供を妊娠出産するリタという男の子みたいな格好の女の子と出会った時に言った「女の無駄遣い」と、あれだけ着飾るのが好きで綺麗な物や可愛いものにこだわるJのドレスの中は、ボクサーパンツなのがなんだか可愛い。