秘密 木原 音瀬 (2007/04/21) 蒼竜社 この商品の詳細を見る |
悪夢を抱え街を彷徨っていた啓太は、杉浦と出会いセックスを条件に泊めてもらう。男と寝たい訳ではなく、啓太は自分のアパートに帰りたくなかったのだ。都合のいい相手でしかなかったが、次第に杉浦の一途さに心が揺れだし…。
「秘密」とそれに付随する、杉浦と従妹の榎本の関係に焦点を絞った「秘密2」、杉浦と家族の関係を描いた「秘密3」を収録。
Dyslexia(難読症)の杉浦と元彼を殺してしまい、死体を隠している自分の部屋に帰りたくない啓太とが依存していく話。
「秘密」は、不条理でどうしようもなく重いです。ちょっとホラーも入ってるかも。
啓太に一目惚れした杉浦が、啓太のためなら何でもすると尽くして尽くして罪もかぶろうとするのですが、純粋なだけに一方的で強引です。
啓太は啓太で、最初は部屋に帰りたくないからと利用できる相手としてしか杉浦を見ていなく、それぞれ違ったベクトルで自分勝手ですが、掘り下げると心の闇を抱えていて善悪の基準がわからなくなってきます。
単純に純粋なことがいいのか悪いのかはわかりませんが、秘密3で啓太と杉浦の関係が良い形に落ち着いてることが分かりホッとします。啓太が世話焼きだとは思わなかった。
秘密3は杉浦のDyslexiaを家族に理解してもらえず、特に厳格な父親と対立して家族の縁まで切られてしまい、やりきれない気持ちになるなかで、杉浦の純粋な気持ちが家族との関係を修復していく過程が丁寧に描かれていて胸にグッときました。
考え方を簡単に変えることは難しく、不器用なやり方ではあるけれども、最終的に杉浦と家族との距離が少し縮まって啓太との関係だけじゃなく家族の繋がりも描かれており、書き下ろしまであって完結だったと思います。
かなり重い展開なので、明るいのを求めているときに手を出してはいけません。
けれども、BL的にはエッチシーンは杉浦がやたら絶倫のテクニシャンという設定なので、それなりに楽しめたと思います。