美少年 団 鬼六 (1997/05) 新潮社 この商品の詳細を見る |
この本は男女ものです。
団鬼六は男女のSMを書く人なのですが、収録されている『不貞の季節』『美少年』『鹿の園』『妖花―あるポルノ女優伝』四編のうちの一作が男男テイストだったので、その『美少年』を中心に取り上げてみたいと思います。
全体では私小説である「不貞の季節」の団鬼六のがおもしろい。
妻を寝取られた相手から、その妻との猥談を根掘り葉掘り聞いて声を隠し撮りまでさせ、嫉妬に狂いながら欲情している団鬼六は立派な変態M男。
SMの元締めと言われた人の赤裸々な倒錯ぶりがエロティック。
「美少年」は、誰も救われない人の業と時の流れが読後にやるせなくなる。
日本舞踊宗家御曹司、菊雄は同性愛者でありでもある。
望めば何でも手に入りそうな美貌と名声がありながら、作者に向けられた純粋な気持ちからの菊雄の行動が、その気のない相手を好きになってしまったどうにもならない状況に切なくなる。
女らしさとは性別で判断するものじゃない。そう思えるほど菊雄の繊細な気遣いが、卑しさや媚びではない古き良きをイメージする女性的である。
好きになった男(作者)に裏切られ、悪友の男と女達に辱められてしまうのだが、極限の状況でも恥じらいをなくさない菊雄の細やかな心と、女性的であるが故の潔さがかっこ良い。
その菊雄を売った相手の男と作者が四十年後に当時を振り返っている。
当時現場にいた中で生きているのが2人だけの現在。すっかり丸くなっている男達に老いと時の流れが残酷。
SM趣味のあった男に強姦時の写真をネタに脅された菊雄が、最終的には自殺していたというのにショックを受ける。
団鬼六らしくハードな描写で綴るSM世界。
BL漫画にもなってるらしい。
美少年 小野塚 カホリ、団 鬼六 他 (2005/03/31) マガジン・マガジン この商品の詳細を見る |